#02

PROJECT STORY

STORY_02

クルマと家をつなぎ、
暮らしに安心を

クルマde給電 開発プロジェクト

  • 土屋 智紀

    商品開発部 先行開発室
    室長

  • 村松 奈美

    商品開発部 先行開発室
    暮らしソリューションG
    グループ長

第一章被災地で希望の光となった、
クルマの電力

2011年に発生した東日本大震災。東北地方に未曾有の被害をもたらし、多くの人が仮設住宅での生活を余儀なくされた。電力不足に悩まされていた被災地で希望の光となったのはトヨタのハイブリッド車。クルマに搭載されたアクセサリーコンセントから電気を供給し、様々な家電を動かし、被災地の人々の暮らしに温もりを届けた。その技術はあくまで家電単体を動かすものだったが、その発展したアイデアとして、クルマと家をつなぐ構想が持ち上がった。
クルマから家に電力を送ることができれば、たとえ家が停電になったときも人々の暮らしに安心を届けることができるのではないだろうか。当時、これまでの常識にはない全く新しいアイデアだった。当時のトヨタホームは他のハウスメーカーに先駆けて、スマートハウスを打ち出していた時期だった。そのスマートハウスの設備の一つ として「非常時給電システム」という、クルマde給電の前身となるアイテムを世の中に解き放った。

第二章安全性とコストの壁

「非常時給電システムは斬新であるがゆえに、時代が追いついていなかった。」当時を振り返って、土屋はそう語る。クルマの電力を家に取り込むという発想自体が当時の世の中にはなかった。電気事業法上、電気を生み出すクルマは「発電所」と同じ扱いになってしまう等、クルマと家をつなぐ事に対する安全基準が明確になっていなかった。
その後2013年に制定されたV2Hガイドラインは、クルマと家をつなぐ安全性のガイドラインとなった。一方で、そのガイドラインを突破するためには、コストが膨れ上がるという新しい課題にも直面した。安全基準をクリアするためには、より多くの技術が必要になる。「この金額では、高すぎて普及しない」プロジェクトメンバーはそう感じた。
一方でクルマ側も安全基準に合致させるためには追加のコストが必要となることが判明した。トヨタホームのプロジェクトメンバーたちはなんとかV2Hを達成しようと最後の最後まで粘ったが、最終的にはトヨタ自動車・トヨタホーム両社の議論の末、V2Hをあきらめることになった。

第三章時代が追いついた、2020年

消えかけたプロジェクトの灯火は、2020年に再び熱を帯び始める。きっかけとなったのは、当時の日本で起きていた数々の自然災害。地震によって、大規模エリアで停電が起こるブラックアウトが日本で初めて発生するなど、非常時の対応が社会課題となっていた。
「もう一度仕切り直してチャレンジしたい」「災害大国日本にとって、起死回生となる製品をつくりたい」土屋を筆頭に社内でプロジェクトが立ち上がり、トヨタ自動車とタッグを組み直した。もともとはクルマと家を直接つなぐ仕様だったが、分電盤との間に車両接続用装置を追加することが解決策の突破口となり、安全面の難題を乗り越えた。
さらには技術的な進化も追い風になった。初期の開発当時は高価だった設備や部品が、月日は流れて汎用化し、結果的に目標コストまで抑えることに成功した。そうしてようやく「クルマde給電」と名称を改め、発売がスタート。実は現在も原価低減は進めており、価格はさらに低下している。できる限り購入しやすい金額で、全国の家庭に普及させたい。その愚直な想いが実り、「クルマde給電」は日本中の家族に安心を届けている。

第四章トヨタグループだから、
できること

プロジェクトが再始動してから、発売までの期間はわずか一年弱。類を見ない速さで進んだプロジェクトの成功の裏には、トヨタグループの英知が隠されている。「例えば、トヨタのグループ関連企業である矢崎エナジーシステムから、電気技術のプロフェッショナルが仲間として加わってくれたり、デンソーの技術力が課題解決の原動力になったり。トヨタグループのシナジーが存分に発揮されたプロジェクトだったと思う。」土屋や村松はトヨタグループの強さをひしひしと感じている。一方でクルマde給電は、一つのクルマと一つの家をつなぐものに過ぎない。これから先の未来は、クルマと家を飛び越えて、モビリティを活用した街づくりの時代がやってくる。まさにクルマと街がつながる世界。そのときに、トヨタホームが培ってきた街づくりのノウハウとモノづくりの執念、そしてトヨタグループのシナジーを発揮すれば無限の可能性が広がるだろう。きっと、未来のトヨタホームは、社会を変える“ライフチェンジメーカー”になっているに違いない。
(所属部署や原稿は取材当時の内容となります)

Member’s side story〜社員の成長編〜

変化の機微を捉え、
まだ世の中にないものを
生み出していきたい

村松 奈美

トヨタホームに入社する時から今日までずっと「今までにないものを作りたい」という想いを大切にしてきました。 クルマde給電のように、当時の世の中になかったものをつくるのは純粋にワクワクします。一方で、今の世の中は物凄いスピードで変わっていますよね。だからこそ、そのスピードに置いていかれないように、国内外の企業をベンチマークしたり、展示会に出席したり、関係会社に話を聞きに行ったりとインプットを大切にしています。そして、チャンスがあればクルマde給電に続く、まだ世の中にないものを生み出していきたい。その想いが、今の私の原動力です。

TOP