店舗併用住宅は、自宅と店舗を一つの建物にまとめることで、開業コストを抑えたり、通勤時間をなくしたりと、多くのメリットを得られる住居です。一方で、住居と店舗の動線が重なりやすい、用途地域の制限や騒音・プライバシーの問題が生じやすいなど、通常の住宅とは異なる課題に注意が必要です。
この記事では、店舗併用住宅の基本的な仕組みから、設計のコツ、資金面の注意点、そして実際の建築実例までを網羅的に紹介します。さらに、これから店舗併用住宅を検討している方に向けて、失敗を避けるためのポイントも解説します。
店舗併用住宅とは？
店舗併用住宅とは「住まい」と「店舗」を一つの建物にまとめた住居形態です。自宅の一部を活用してカフェ・美容室・物販店・サロンなどを開業でき、通勤の負担を軽減しながら、家事や育児との両立がしやすい住居を実現できます。
また、動線を分離して設計すれば、店舗の機能性と住居としての快適さを同時に実現することが可能です。来客と家族の生活エリアが交差しないようにすれば、接客中でもプライベート空間を維持できます。
ただし、業種によっては必要となる防音・換気・給排水などの設備計画が欠かせません。特に、飲食や美容関連の店舗では、事前にしっかりとしたインフラ整備が求められます。
店舗部分の面積割合によってローンや税金の扱いが変わる点も、計画時に押さえておきたいポイントです。
店舗兼用住宅との違い
「店舗併用住宅」と似た言葉に「店舗兼用住宅」がありますが、法律・融資・税務面などが異なります。
・店舗併用住宅：住居部分が過半（50％超）
→ 住宅ローンが利用しやすい
・店舗兼用住宅：店舗部分が過半（50％超）
→ 住宅ローンを利用できない場合があり、事業用ローンが必要となる可能性がある
店舗部分が多くを占める店舗兼用住宅は、住宅ローンを組めない場合がほとんどです。一方、店舗併用住宅は住宅ローンを利用しやすく、ローン返済の負担を軽減できます。
なお、住宅部分には軽減措置がありますが、店舗部分は通常どおり課税されます。店舗併用か、兼用かで経費計上できる範囲や減価償却対象も異なり、設計だけでなく運用・管理面にも影響が出るため、両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。
店舗併用住宅を建てる前に確認したいポイント
店舗併用住宅を建てる際には「お金・法規・立地」の3つが複雑に関わります。設計段階で押さえておくべき主なチェックポイントを解説します。
店舗割合に合わせて住宅ローンの条件を確認する
住居部分が延床面積の50％超であれば、住宅ローンを利用しやすくなります。これに満たない場合、事業用ローンが必要となる可能性が高くなるため、計画段階での確認が不可欠です。
さらに、ローンの種類によって金利・返済期間・団信（団体信用生命保険）の適用条件も変わります。将来の資金計画を見据え、金融機関と早めに相談しておくことが重要です。
固定資産税の仕組みを理解して節税につなげる
店舗併用住宅では、建物の用途に応じて固定資産税が按分されるのが一般的です。住居部分には新築軽減などの税制優遇措置が適用される場合もあります。
一方、店舗部分は設備や内装にかかる費用を減価償却資産として経費計上できるため、事業上の節税につながる可能性もあります。あらかじめ税理士や専門家と相談し、税負担の最適化を検討しましょう。
用途地域を把握して開業できる店舗か判断する
開業予定地の用途地域によって、許可される店舗の業種や規模が大きく異なります。たとえば、第一種低層住居専用地域では、店舗開業が制限される場合があるため、土地選定時に用途地域の確認が欠かせません。
さらに、業種によって、必要な許認可や設備基準（換気・排水など）も異なります。地域ごとに建築可能な建物の高さ・ボリューム・駐車場配置も制限されるため、慎重に検討しましょう。
集客と暮らしを両立できる立地か見極める
店舗の成功には、人通り・視認性・アクセス性・駐車スペースの有無などが大きく影響します。一方、住まいとしての快適性を損なわないよう、騒音・交通量・日照・治安といった環境も重視しなければいけません。
仕事と暮らしの両立実現には「どちらか一方に偏らない立地選び」が鍵です。現地調査や周辺環境のチェックを徹底して行いましょう。
成功しやすい店舗併用住宅の間取りづくりのポイント
ここでは、集客しやすい店舗づくりと、家族が快適に暮らせる住まいづくりを両立するために、事前に間取りで押さえるべき5つの視点を解説します。
住居と店舗の動線を分けてストレスを減らすように設計する
来客の動線と家族の生活動線が重なると、プライバシーを確保しにくくなります。そのため、別玄関の設置や外階段の導入、店舗直結のバックヤードなどを取り入れて、動線を明確に分離することが大切です。
動線を分けておけば、将来的に家族構成や事業形態が変化した場合にも、空間の使い方を柔軟に変更しやすくなります。
居住スペースのプライバシーを守れるようにレイアウトする
店舗部分から生活空間が直接見えてしまうと、家族が落ち着いて過ごしにくくなります。そのため、LDKや寝室を店舗から見えない位置に配置し、2階リビングや段差などで視線をコントロールする工夫が有効です。
さらに、玄関の位置や廊下の取り方を工夫すると、生活音や人の気配が伝わりにくくなります。住宅としての快適性を保つためには、視覚的・聴覚的なプライバシー対策が欠かせません。
集客につながる外観・入口・空間デザインを工夫する
店舗併用住宅で集客力を高めるには、外観のデザインと入口の配置を工夫することも重要です。たとえば、店舗の入口を道路に面した目立つ位置に配置すれば、歩行者やドライバーの目に留まりやすくなります。
大きなガラス面の採用や適切な看板、照明演出などにより、入りやすい雰囲気の演出も可能です。店内のレイアウトも、業種に合わせて動線・収納・明るさなどを最適化できれば、快適な空間づくりと作業効率の向上につながります。
店舗と住居の床面積バランスを適切に調整する
店舗の面積が大きすぎると、住宅ローンが適用されにくくなる可能性があります。反対に住居部分が狭すぎると、家族の暮らしに窮屈さを感じるかもしれません。
そのため、事業の将来性と家族構成を見越した床面積の配分が必要です。収納スペースを効率的に確保する工夫や、多目的に使えるスペースの設計なども重要な視点といえます。
騒音・匂い・振動を抑えられるように計画する
飲食店や美容室、物販店など、店舗の内容によっては、騒音・匂い・振動が住居空間に影響を与える可能性があります。そのため、換気・排気・給排水などの設備を業種に応じてしっかり整えつつ、配置場所や稼働音のチェックを事前にしておくと安心です。
壁・床・天井の防音性能を高める設計により、住居空間への影響を最小限に抑えられます。
【建築実例】店舗併用住宅で叶えた暮らしを紹介
ここでは、実際にトヨタホームが手がけた店舗併用住宅の建築実例を紹介します。動線設計や設備の工夫、暮らしやすさと事業性の両立ポイントなどを確認しましょう。
白い外観が印象的な生花店・カフェ併設の店舗併用住宅
白を基調とした外観が目を引くY様邸は、1階に生花店とカフェ、2階に住居を配置した店舗併用住宅です。店舗と住居の玄関を分けることで、プライバシーを守りつつ、接客のしやすさも両立しています。将来を見据え、二世帯化にも対応できる可変性を備えている点も特徴です。
住居部分では、吹き抜けとスケルトン階段が印象的な玄関ホールや、広々としたLDKにより開放的な暮らしを実現しました。24時間365日、家全体の温度差を少なくするトヨタホームの全館空調「スマート・エアーズ PLUS」を採用しているため、大空間でも快適な室内環境が保たれます。
白い外観が印象的な生花店・カフェ併設の店舗併用住宅の建築実例を見る
美容室と住まいを心地よく両立した店舗併用住宅
W様邸は、1階に美容室、2階に住居を設けた店舗併用住宅です。日常的に来客が多い業態に合わせ、店舗と住居の入り口を完全に分離するなど、生活空間への配慮を徹底しています。店舗部分では、施術がしやすいワンフロアの設計を採用し、収納や動線、照明の色味切り替えなど、細部にまで工夫が凝らされています。
一方の住居スペースは、2階にLDKを集約し、家族が落ち着いて暮らせる静かな空間に仕上げました。仕事とプライベートがしっかり分けられた設計によって、長期的に快適な暮らしと働き方を両立できる住まいになっています。
美容室と住まいを心地よく両立した店舗併用住宅の建築実例を見る
トヨタホームなら、土地に合わせた最適な店舗併用住宅の活用提案が可能！
トヨタホームでは、住宅だけでなく、賃貸住宅や店舗、オフィス、複合型施設など、多用途な建築提案が可能です。土地の形状・広さ・立地条件を踏まえ、オーナー様の目的に合った最適な活用方法を提案します。
建築後の経営・管理サポート体制も充実しており「空き地を有効に使いたい」「相続対策として収益物件を建てたい」といった長期的な資産形成ニーズにも柔軟に対応できます。初めての土地活用でも安心して取り組める仕組みが整っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
将来の使用方法まで考えた店舗併用住宅のつくり方
店舗併用住宅は長く使い続ける建物であるため、将来のライフステージや事業の変化にも対応できる柔軟な設計が欠かせません。
ここでは、間取りの可変性、設備配置、外部からのアクセスなど、事前に工夫しておきたいポイントを解説します。
将来の変化に合わせて間取りを変えられるようにする
子どもの独立や事業縮小など、ライフスタイルは年月とともに変化します。ライフうステージの変化に柔軟に対応するためには、将来的に間取りを変更できることを見越した計画が重要です。
たとえば、水回りをまとめて設置しておく、間仕切りしやすい壁配置にする、といった工夫により、住居の拡張や収納増設にも対応しやすくなります。
貸店舗として使えるように水回りと出入り口を整える
将来、現在の店舗を「貸店舗」として活用する可能性がある場合は、最初から賃貸利用も見据えた仕様にしておくと安心です。店舗側でトイレや給排水などの水回りが完結できるように設計すれば、居住部分と切り離して賃貸に出しやすくなります。
また、外部から直接アクセスできる専用の入口を設けておくことで、住居側を通らず入店でき、テナント利用者にとっても使いやすい空間を実現できます。将来の用途変更を視野に入れるなら、異なる業種にも対応できる汎用性の高い設備・間取りを検討しましょう。
動線・構造・空調まで！店舗併用住宅もトヨタホームで理想を形にしよう
店舗併用住宅は、暮らしやすさと事業性の両方を満たす必要があるため、間取りの工夫、用途地域の確認、将来の使い方を見据えた設計が欠かせません。
店舗と住居の動線を分けたり、独立した入口を設けたり、将来の用途変更に対応できる構造を整えたりすることで、長く安心して住み続けられる住まいが実現します。
トヨタホームでは、鉄骨ラーメンユニット構造による大空間設計、将来を見据えた可変性の高いプランニングを行っています。また、全館空調「スマート・エアーズ PLUS」による快適性など、店舗併用住宅に求められる条件を高いレベルで満たすご提案も可能です。
これから店舗併用住宅をご検討されている方は、ぜひ一度トヨタホームへご相談ください。
【全国のトヨタホーム展示場を探す】
https://www.toyotahome.co.jp/s/tenjijo/?ad_cd=hometag
【カタログ請求はこちら】
https://www.toyotahome.co.jp/s/catalog/?ad_cd=hometag
店舗併用住宅に関するよくある質問
Q. 店舗併用住宅に向いている業種は？
美容室・サロン・ネイル・整体・カフェ・パン屋・士業事務所・教室系などが代表的です。来客数や音・においの強さによって適性が異なります。
Q. 店舗併用住宅の間取りで重要な点は？
来客動線と生活動線を分けることが最重要です。玄関・階段・水まわりを分離することで、営業中も落ち着いた暮らしを保ちやすくなります。
Q. 店舗と住居の玄関は分けるべきですか？
基本的には分ける方が望ましいです。プライバシー確保と店舗イメージ向上の両面でメリットがあります。
Q. 音やにおいの問題は対策できますか？
設計段階で対策可能です。上下階の配置、遮音性能の高い床・壁、換気計画の工夫などにより、トラブルを未然に防げます。
Q. 店舗併用住宅は固定資産税や税金が変わりますか？
店舗部分は住宅用とは扱いが異なる場合があり、税務上の区分が発生します。事前に税理士や専門家への相談がおすすめです。
Q. 店舗併用住宅はどんな人に向いていますか？
自営業・個人事業主、開業予定の方、自宅で仕事をしたい方に向いています。仕事と暮らしを近づけたい方に選ばれています。
